位相と集合(斎藤毅著)
先日。BookOffで「集合と位相(斎藤毅著、東京大学出版会)」購入しました。なんと210円!
というのも。最近、「データサイエンスの為の大学初年次向けの数学」を物色しているというのが背景。この目的からは少し外れるだろう、といういことは、BookOffで見た瞬間から理解しているのですが、「数学原論」の斎藤先生の本だということもあり、購入。
以前、記事にもしましたが(コチラ 参照)、集合・位相の入門編としては、松坂本一択、だと思っていました。もちろん、松坂本のすばらしさは1mmも下がっていないのですが、斎藤本は、その上を行った、という感じです。この本が無風凧の学生時代に合ったらなあ、、、と思えるほど、素晴らしい教科書です。(レベルも、スタート地点はほぼ同じで、到達点は一歩先)。
何が素晴らしいか。「よりみち」というコーナーがあること。教科書として書かれている文章の合間に、「補足」として「よりみち」が書かれています。この補足の部分が、秀逸すぎます。例えば、論理学で用いる「⇒」と数学で用いる「⇒」では意味が違うこと、などを明示してくれています。また、同じ記法が二つの意味を持つ場合に「これは、文脈で判断するしかない」ということを明文化していることも好感が持てます。実際、初学者は「どちらの意味だろう?」となやむということを、無風凧も経験していますから。この「よりみち」は、テーマである「集合・位相」に直接関係ないことも書いてあるからこそ、このテキストの価値があります。
加えて。何を説明したいのか、いわゆる「PREP」に近い形で書かれている。数学の本は「定理と証明」とはよく言いますが、斎藤先生の本は、細かく目的が明示してあるので、判り易い。次に何をしたいから、今何をする、というのが全てではないにしろ判り易い構造になっています。
もう一つ。松坂本の比べるなら、言葉が現代風になっている点も、判り易さの一因でしょうし、内容も、集合論ではありますが圏論を意識している(圏論学習の際に接続性が良い)。
これなら、210円ではなく2800円+税で購入してもよかった、と思いました。
蛇足: いま、文科省はデータサイエンティストを増産しようと躍起になっています。いまさらエクセルが使えるように、ということではなく、生成AIやBigデータ解析のための人員を育てたい、ということでしょう。しかし、それに特化してしまうと「10年後には使えない小手先の技術」を覚えていることになります。ここは一歩ひいて、「考え方の基本」を学んで20年後30年後の足掛かりにする教育が必要です。その意味では、理科系の大学を卒業することは、斎藤本を理解していること、というレベル感が良いのではないかと思います。、、、は、ちょっと高望みしすぎですね。一応、東大数学科の2年生向けだそうです。(無風凧は1年生の教科書だと思って読みました)。
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