マネーゲーム崩壊?
シリコンバレー銀行、そしてシグネチャーバンクと、アメリカの「ベンチャー投資系銀行」が相次いで破綻しました。アメリカと、ヨーロッパや日本は環境がちがうとは言うものの、影響は必至です。
いわゆる「シリコンバレー」のベンチャー神話も、一緒に崩壊していくのではないか、と無風凧は10年後を予測しています。一発屋系のベンチャーは撤退し、質実剛健な研究の郷に戻ることを期待、という方が無風凧の気持ちにストレートな表現です。
無風凧は、ベンチャー投資はマネーゲームだと思っています。というのも、新規事業を立ち上げるのは、常に「ゲーム」。100%成功する新規事業なんてありえませんからね。
自己資金でなりない分は、融資か投資で賄う。貸す人は返してもらうことが前提。ちなみに最近はクラウドファンディングなどという手法もありますが、これも投資を変形したもの。起業初期のリスクヘッジの手法の一つです。
さて。このマネーゲームは、ポーカーやパチンコ、競輪競馬とは少し違ったゲームです。どこが違うかということ、出資・融資を行う人(提供側)と、お金を受ける人(起業側)が直接つながっていない。
え?と思う人も多いかと思いますが、銀行もVCも、ほとんどの場合、「個人のお金」ではありません。その意味で、ばくちとは違う。提供側と企業側の間に「いくつの仲介が入っているか?」が大きな分かれ道になります。
個人投資家の場合は、もちろんゼロですね。提供側の「自分のお金」を起業家に直接渡す。だから、個人投資家の「資金」は個人保有のもの。だから、破綻しても投資家個人の範囲だし、そもそも借金するわけではないので、影響は小さい。
機関投資家の場合は。機関の持っているお金。こうなってくると、個人投資家とは少し事情が異なってきます。機関投資家がその機関の持っている資金の中で投資している場合は、影響は1段階だけです。これは、「機関の財布」ー「ファンドマネジャー」ー「起業家」という意味です。つまり、機関の財布が本来の意味でいう提供側です。まあ、失敗しても機関の財布が細くなり、ファンドマネジャーのボーナスが減額される程度でしょう。
でも。機関投資家が「個人の投資家のお金を集めていたら」、事情は異なります。
「個人投資家」ー「機関の財布」ー「ファンドマネジャー」ー「起業家」のように2段階の中継ぎがあります。中継ぎが増えるたびに、ステークホルダーが多くなるのは言うまでもありません。結果、影響の範囲が大きくなる。加えて、責任の所在があいまいになってきます。ファンドマネジャーも、いくつもの案件を持っていて、「全体でプラス」であれば、本人としては「成果」が出ていることになりますが、「マイナスになった」個人投資家は目も当てられない、ということになります。(それをヘッジするための金融商品も最近は多数出ていますが、原理は同じです。小さな失敗の確率は下がっていますが、破綻したときの影響の大きさは大きくなっていて、期待値としては、あまり変わりありません)。
さて、銀行の場合。銀行の場合は、起業家からの利息収入を得ることがビジネスモデルであり、投資家がキャピタルゲインを狙うのとは異なりますが、「ファンドマネジャー=融資担当者」、個人投資家を「預金者」と読み替えれば、まったく同じ構造です。つまり上記の「階層」でいうなら、最初から2段階の仲介が入っている。
とどのつまり、この2層の仲介型のマネーゲームが「崩壊する」条件がそろってきた、というとでしょう。どの場合でも「起業」が成功しないことには勝者がでないマネーゲーム。今は、企業が成功しにくい環境になってきた、と言い換えても良い。
これまでの起業ブーム、一攫千金をめざした博打投資の風潮を改めて、Bootstrap型の質実剛健な社会に変革するべき時期がきたのではないでしょうか?
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