現在、COVID-19が広がっているのかいないのか。
これを正確に理解するには、いわゆる「データリテラシー」が必要になります。
東京都の例が分かりやすいので、今日はデータリテラシーを説明しながら、考えてみましょう(東京都のデータは コチラ にありますので、ぜひ参照してください。)。
まず。
ここ最近、PCR陽性者が増えています。これだけで、「感染者が増えている」と言えるでしょうか?
答えは NO です。ここまでは、ご存じの方も多いでしょうし、現在、経済復興優先派の方、菅さん西村さんホリエモンさんなども、NOと言っています。なぜでしょう?
それは、「検査数」がふえているという条件を加えた見方をしていないからです。
「東京都民から任意抽出した100人検査して10人陽性」「同じく1000人検査して100人陽性」は、感染が広がっている、とはこの情報だけでは言えないのです。、、、(A)
東京都の検査数は、土日の検査数が少ないなど色々な要因があり、「陽性者数だけ」を根拠に「感染拡大」と言い切ることはできません。
では、次に何を調べればよいか。そんな場合には「陽性化率」 を見てみましょう。
「100人検査して10人」と「20人検査して5人」だと、どちらがより感染しているでしょうか? もちろん、後者ですね。感染率に関していえば、前者は10%、後者は25%です。このように、「陽性化率」を調べれば、どちらがより「悪化しているか」が分かります。東京都の陽性化率は、徐々に、ではありますが増えています。一か月前(7/3)は、4.5%、8/3は7.1%となっています。単純にいえば、7月3日は、1000人中に45人だった感染者が、8/3は71人に増えている、ということです。、、、(B)
一般的に考えれば、ここまでで「感染者が増えている」ということができます。現在の東京都の検査体制だと、増えているといってよいでしょうが、データを正しく見る立場でいえば、まだ不完全です。「一般的に」と言ったのは、「もう少し慎重にデータに向き合ってください」という意味を込めています。
簡単に言えば、「発熱も咳もしてないひとを100人選んで、その中で10人感染している」場合と、「発熱と咳がある人を20人選んで5人陽性」という場合は、どちらが感染していると言えるのでしょうか?これは、とても難しい問題です。岡田晴恵先生が「疫学的検査をしなくてはならない」と主張していたのは、この「検査する人を選んだ時点で、陽性化率も指標になりにくい」ことを指しています。、、、(C)
統計学的には「母数集団の特性」依存の話になり、陽性率だけでは正確には判別できません。
ただし。今回の東京都を例にとれば、東京都からの公開データの中に、別視点での情報がありました。それは、「その他参考指標」の中にある、「受診相談窓口における相談件数」「新型コロナコールセンター相談件数」です。ここに相談してくる人の前提条件(Profile)は、変わっていません。にも拘らず、ここ一か月で約2倍に増えています。つまり、「自分はCOVID-19に感染しているのではないか」と疑う人の数が増えているわけです。
ここで、2通りの考え方をしなくてはなりません。(この部分の詳細は公開されていない)。
コールセンターに電話がかけてきた人を、全部PCR検査に回したとしたら、上述の「発熱と咳がある人を選んで」いるわけですから、当然のように陽性化率が上がります、、、(C)の例になります。この時点では、悪化していると断言できるかは、もう一つ別の可能性を考える必要があります、、、(D)。逆に、ここでほとんどを「感染の疑いなし」としてPCR検査に回してないとすれば、(B)の例になります。つまり、感染拡大です。
さて。最後に(D)の場合をもう一度考えてみましょう。Dの場合は、陽性率が高いと思われる人が沢山検査に回ったことにより、PCR検査の結果で感染者数が増えた、ということになります。ここで、Dでは、相談に来ている人が増えている、というデータがあります。「健康に不安が無いのに相談はしない」という一般常識的な視点に立てば、Dが増えている時点で、感染者数が増えている、ということができると言えます。論理的には若干弱い(一般常識、という主観が入っているから)ですが、ここまで考えることがデータリテラシーとしては必要となります。
そして。
ここまで考えて、感染者数は「増えている」という結論を導き出しました。さて、感染は広がっていない、と主張する方、反論できますか?
最近のコメント