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匙("無風凧の気持ち、翻訳。")

今日はちょっと趣向を変えて、"無風凧の気持ち、翻訳。"

昨日、某コンビニエンス・ストアでのこと。店員嬢が、

「箸をお付けしますか?」

と訊いたので(ここまでは普通の接客ですね)、無風凧は

「匙をお願いします。」

と応えました。店員嬢は、何故か、箸を袋に入れる(アレ?っと思う)。もう一度、

「箸ではなく、匙をお願いしますね。」

と言っても、「何言ってんのかしら?」という表情。

もう、お判りでしょう。「匙」という日本語を知らなかったのです(後から確認しましたが、やはりご存知ありませんでした)。言葉を知らないこと自身をとやかく言うのはお門違いかもしれませんが、「匙を投げる」「匙加減」という言葉に始まり、中勘助の名文「銀の匙」にいたるまで色々なところで使われている基本語です。コンビニでは、

「スプーンをお願いします。」

と言って、一件落着しましたが、情けない話だな、と思いました。

というのは。
「匙」を「単純に英語」で言えば Spoon です。その意味では、上記の店員嬢は英語だけを知っていたということになります。でも「匙を投げる」を「throw a spoon」では、本当の意味は伝わりません。この場合は、"give up all hope"とか"throw in the towel"が近い英語になります。spoonは出てきません!(逆に、日本で タオルを投げる というと、ボクシングファン以外は何のことやら判らなくなるのではないでしょうか?) つまり、「匙」という単語には、「物についている名前」という役割以外にも、色々な文化的な意味が付加されているのです。

巷では、英語英語と叫んでいます。国際競争力を尺度にすれば、間違えてはいないでしょう。でも。「日本文化」の視点でえば、「まず日本語を正しく理解してから」と主張したくなります。言語が無くなることは、文化が途絶えること、そして、国家が滅亡することに繋がりますから。

最近、日本語が蔑にされていることに、寂しさと若干の怒りを覚えている、無風凧です。

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